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『レッド・デッド・リデンプション2』『RDR2』プレイレビュー ~「こだわり」と「不親切」のあいだ~

2018年10月26日にリリースされたレッド・デッド・リデンプション2』(以下『RDR2』)をクリアしたので、興奮が冷めないうちにプレイ後の感想でも書こうと思う。

 

ストーリー上のネタバレは避けるので、未プレイの人も安心して読んでもらいたい。

 

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RDR2はプレイヤーに寄り添わない

 

まず最初に、RDR2を一通りプレイした印象を書こうと思う。最近のゲームは「いかにプレイヤーが快適に遊べるか」を追求しているものが多い。リアリティを追求することでプレイ上の快適性が損なわれるのであれば「まぁ、ゲームだからね」と簡略的に表現されたり、ゲーム側からイイ感じにアシストしてくれるように仕上げるというのが、AAA級のゲームでは鉄則とされているように思える。最近のゲームで言えば、適当にボタンを押していればスイスイと街を気持ちよく移動できる『Marvel's Spider-Man』が該当するだろうか。これも素晴らしいゲームです。

 

ところがRDR2ときたら、そんなことはお構いなし。制作側が作りたい、こだわりたいと思ったものをとことん突き詰めている。「まぁ、ゲームだからね」という妥協を排除するために、遊びやすさを意図的に犠牲しているような節さえ感じたほどだ。このスタンスによって「遊びにくい」とか「面倒くさい」とかのネガティブな意見も当然プレイヤーからは出てくる。海外レビュー解禁後にメタスコアは97点の超高評価をマーク、「2018年を代表する約束された神ゲーになる」と日本国内でも期待されたが、現状は評価が大きく割れている。予想だけど、今後もこの状態は変わらないと思う。

 

僕自身、プレイを通して涙が零れそうになるほど心震えたこともあったし、「イケてねーシステムだな」とイラついたこともあった。Twitterで何回かツイートしたけど、RDR2は万人にオススメできるようなゲームではないと思う。ゲームシステムやUIなどの問題点に文句を言いつつも、狂気とも思える各所のこだわりに圧倒され、ついつい没入してしまうという人が多かったんじゃないだろうか。「俺達が作りたいものを作った。ついてくるかはお前ら次第だ」という"法からは外れたけど、自分の信条だけは裏切らずに生きるならず者"を体現しているようにも思える。癒やされると同時に疲れるゲームでもあった…なんとも評価が難しい大作である……

 

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躍動する世界、そこには"命"があった

 

RDR2をプレイしていく中でとにかく素晴らしい思ったのは、僕がオープンワールドゲームに対して望むことの多くを体験させてくれたという点にある。プレイヤーは主人公である「アーサー・モーガン」を通して、所属するギャング団を存続させるために奮闘するというのが大まかなストーリーになる。ゲームの舞台は山岳部から始まり、次第に平野部、森林部、沼地、荒野、湖水地域、工業地帯…etc.といった具合に様々なロケーションを旅することになる。このいずれにも多くの動植物が生息しており、街には人が住んでいる。動物には生態系が形成されており、捕食者と被捕食者の食物連鎖が発生している。人間の方に目を向ければ、敵対ギャングと保安官の小競り合いや突発的な誘拐事件なども発生する。プレイヤーはそこに介入することもできるし、何もせず見過ごしても良い。その一方で、強盗のため家主を殺害した住居からは人が消え去る。プレイヤーに関係なく発生するイベント数々と、プレイヤーの選択が世界に刻まれていく感覚。僕がオープンワールドゲームをプレイする上で一番に望んでいるものは、この体験なのだなと改めて思い知らされた気がする。加えて、各地の絶景探しも大いに楽しめた。

 

木漏れ日や川面の水煙、地面を打ち付ける激しい雨、暗い雲に走る稲妻、遅れて届く雷鳴、雨上がりの泥濘、夕日に染まる空、V字の隊列を組んで彼方を目指す渡り鳥、天の川が見える星空、キャンプを照らす焚き火。一寸先も見えない激しい吹雪、白い息、伸びる頭髪やヒゲ、衣服の損傷。ハエがたかる動物の死骸、汚物。

 

自然の景観、生理現象が圧倒的なグラフィックで美しく、厳しく、汚らしく表現され、その緻密さには思わずため息が漏れる。この描写によってNPCひとつひとつに命が宿り、意思を持って行動しているのだという説得力を見事に作り上げている。グラフィックだけではなく、馬の足音や銃声といったサウンドについても心地良いものが多い。ゲームではあるが、RDR2のウエスタンはちゃんと"生きている"のである。巨額の予算を投じ、およそ8年にも及ぶ制作期間の中で徹底的なリサーチを繰り返し、気の遠くなるような作り込みに励んだのだと思う。「1899年当時のアメリカ西部ってこんな雰囲気だったんだぜ」とか「西部劇でこんなシーン見たことあるだろ?お前にやらせてやるよ」というRockstar Gamesからのメッセージがモニター越しに伝わってくるような感覚を覚えた。

 

これほど圧倒的なグラフィックと魅力的なロケーションを多数有しておきながら、自由にアングルを操作できないフォトモードがないというのは至極もったいない。アップデートで追加してくれませんかね、Rockstar Gamesさん!

 

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「アーサー・モーガン」を"演じて生きる"

 

RDR2が店頭のゲームコーナーに並べられた場合、多く場合はアクションアドベンチャーとして分類されるはずである。しかし、実態はSNSなどで評されている通り「西部劇シミュレーション」とする方が、このゲームの性質を的確に表現していると思う。

 

このゲームを単純にアクションゲームと捉えた場合、操作性の悪さによる爽快感のなさはやはり目につく。キャラクターの操作は動き始めはもっさりとした印象を受けるし、慣性が効いているため、方向転換時には滑るような動きでクセが強い。武器やアイテムの切り替えはL1ボタンでホイール状のウィンドウを表示し、目的のアイテムが表示されている方向にスティック倒したままL1ボタンを離すという手順になる。操作的にやりにくくて、スマートな感じはしない。

 

また、ダッシュにXボタン連打が必要というのも面倒極まりない。オプションで切り替え式にできるけど、結局馬でダッシュする時はXボタン連打が必要(僕は操作感が統一されていないと混乱して嫌なので、結局最後まで連打式で進めた)。聞くところによると同社のグランド・セフト・オートVで使用していた操作系統を引き継いでいるらしい。大ヒットの成功体験が強すぎて刷新できないのだろうか、Xボタン連打のダッシュってどの層に支持されて継続しているのか気になる。

 

武器の種類は多く、ダメージや射程などのステータスも存在するが、その性能差を感じることは正直あまりなかった。あるとすれば装弾数とスコープの有無くらいかな。というのも、敵と戦う際には「デッドアイ」を発動して一時的にスローモーションにし、その間にヘッドショットで一撃必殺をキメることがほとんど。基本的にダメージを積み重ねて敵を倒すという場面が少ない。そもそも、胴体に撃ち込んでも粘る敵がいる一方で、手足に撃ち込んですぐに死ぬ敵もいた。なんか、ダメージについてはわりといい加減な処理になっているように感じる。そんなわけで、ほとんどのプレイヤーは銃撃戦で二丁拳銃かリピーター、ライフルを選択しているんじゃないかな。アクションやシューティングの面で積極的に楽しませようとはしていないように感じた。

 

では、RDR2の楽しさってなんだろうか。僕は「ゲームという仮想世界であえて現実的な制約を受ける」という点にあると感じた。飲まず食わずで寝不足が重なれば栄養不足に陥りステータスに悪影響を受ける。何日も風呂に入らなければ体臭が増し、NPCからは怪訝な態度を取られる。ドラクエのように我が物顔で民家に入り、家主の目の前でタンスを開けるなんて言語道断。すかさず鉛玉が飛んでくる。街で人にぶつかりまくれば治安悪化や暴行の罪状で通報される。考えてみれば当然だ、現実でやるべきではない行為はRDR2でもやるべきではない。ゲームの世界で現実的な行動をするという不自由さが、不思議な没入感を生み出す。

 

朝起きたらコーヒーをカップに注ぎ、それを口にしながらキャンプを歩き回ってみんなに挨拶をする。コーヒーを飲み終えたら、薪割りや水汲みの雑用をするといった日課を組むのも面白いだろう。「与えられた役割を演じる」という点から考えれば、ロールプレイングゲームとも言えるだろう。プレイヤーはダッチギャングの一員であるアーサー・モーガンを通して、"生活"をするのだ。

 

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ミッションの窮屈感とプレイ評価の是非

 

メインストーリーを進めないまま狩猟ガチ勢になることもできるし、ブラックジャックやポーカーなどに熱中するギャンブル狂になることもできる。夜な夜な民家や馬車を襲撃しまくるバーサーカーになっても良い。ウエスタンの大地でどう生きようが自由なゲームではあるが、ミッション中は既定の手順で進めることを強要される。「◯◯の場所へ移動しろ」「◯◯を設置しろ」などの指示が出されるため、「台本通りに動いてくれ、それ以外の行動は許さん」と言われているような窮屈感がある。一例だが、ターゲットの熊を誘き出すためのエサを指定位置に設置する指示が出るミッションがある。ここで指定位置以外にエサを置いたらすぐにミッション失敗だ。「失敗が許されない映画撮影」という例えをどこかで見かけたが、言い得て妙である。

 

ミッションを進める中で指定された条件を満たすと プレイ内容に対する評価がリザルト画面に表示される。この条件が「◯分◯秒以内にクリアした」とか「射撃精度80%以上」とか「◯◯を使ってヘッドショットを5回成功させた」とかでこれまた窮屈。アサシンクリードシリーズ』で一時期あった"フルシンクロ"の悪い部分だけを集めたような条件の目白押しだなと思った。プレイ評価によって報酬が変わることはないようだが、それなら尚更ゲーム性の高める面白い条件を設定して欲しかった。

 

ちなみに、プレイ評価を全て満たすと金メダルが獲得できる(ゲーム内のアイテムではないよ)。これを70個集めると「ゴールドラッシュ」というトロフィーが取得できるわけだが、グレード設定がシルバーなのはイマイチ釈然としない。いや、そこはゴールドじゃないんかーい。

 

「各州の全動物を調べる」「全種類の動物の皮を剥ぐ」という過酷な条件のトロフィーがともにブロンズなのもおかしいと思う。シルバーとゴールドあたりが妥当だろう。どうにもトロフィーの設定は適当な印象を受ける。僕はトロフィーを集めることも好きなので、ここはちょっと残念だなと思う。

 

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制作側のこだわりはプレイヤーにとって不親切になることも

RDR2はリアリティを追求したあまり、プレイヤーにとって不便になることが数多く見受けられる。オープンワールドは広大な土地を駆け巡る必要が必ず発生するため、移動だけでも多くの時間を費やしてしまう。この問題を解消するために各地へ気軽にワープできる「ファストトラベル」(以下FT)を実装している場合が多い。RDR2でもFTはある。あるにはあるのだが…使い勝手はあまり良くない……

 

このゲームにおけるFTは基本的に駅馬車「鉄道」を使用する必要がある。すると必然的にFTを使用して行き来できるのは、このどちらかがあるロケーションに限定されることになる。これの何が問題かというと、アーサーが拠点とするキャンプ地から各地へのFTは可能だが、その逆は不可能ということだ。

 

これができてしまうとせっかく人目を避けて設営したキャンプ地に駅馬車を使って向かうマヌケなギャングということになってしまうわけだから、リアルと言えばリアルだ。自分の馬も持っているのだから、それ使えばどうにでもできるでしょって思うけど、「駅馬車」や「鉄道」を積極的に使用させるための誘導なのかなって感じた。ミッションの開始地点になることが多いキャンプ地へのアクセスは当然悪くなるわけだが、制作側は不便になると分かった上であえてこの仕様にしているように思える。当時の空気感だったり生活のリズムだったりを伝えたかったのかなぁ。

 

ちなみに、キャンプ地から各地へFTする際は目的地までの道中の様子が数カットのムービーで描写される。このムービーは目的地までの距離に比例して尺が長くなり、数十秒に及ぶ。このムービー、スキップ不可だ。ロード中の演出というわけではなさそう。「本来は時間のかかる移動をFT使って省略してるんだから、このムービーを見るくらいの時間は費やしやがれ!」ということだろうか。最初は興味深くても、何度も見せられたら冗長な時間になってしまうことは明らか。ここは制作側のエゴを押し付けられている感じがして好きになれなかった。

 

また、RDR2を語る上で欠かすことができない要素として「野生動物の狩猟」がある。ウサギやリスのような小動物。熊やバイソンのような大型動物などがおり、ターゲットは多種多様だ。この狩猟がなかなかすごいもので、風向きを観察して自身の体臭を感づかせないように気を使ったり、動物に応じて適切な銃器や弾丸を使用したり、一撃で仕留めないと入手できる毛皮の質が落ちたりで結構な奥深さがある。仕留めた獲物の皮を剥げば装備を強化できる材料が入手することができるわけだが、動物の皮を剥いだり、角を折ったりする所作はひとつひとつしっかりとモーションが作られており、省略されることはない。

 

この皮剥ぎモーションはアーサーの手際の良さについつい見惚れてしまうのだが、このモーションもFTムービー同様、スキップ不可。「本来、動物の命を奪って糧を得るってのはしんどい作業だ。この皮剥ぎモーションを見てくれ、どう思う?よくできてるだろ。せっかく作ったんだ。見ろ、見やがれ!」ということだろうか。最初は興味深くても、何度も見せられるのはDammit!

 

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アーサーの生き様と強さに心が震える。不満点はあるが味わい深いゲーム

 

前作レッド・デッド・リデンプション』(以下『RDR』)の前日譚に当たる作品のため、前作からストーリーが続いているわけではない。僕は過去にクリアしているのだが、正直ストーリの全てを覚えているわけではない。だけど、RDR2の主人公「アーサー・モーガン」の強さや良心が、RDRの主人公「ジョン・マーストン」へ強く受け継がれていることはしっかりと理解できた。印象深かったジョンのセリフや哲学は、アーサーの存在があったからなのだと分かった。前作に関する知識は必須ではないが、あればより味わいが深くなることは間違いないと思う。

 

アーサーはギャング団の一員であるため、時には列車強盗をするし、銀行襲撃もする。借金を取り立てるために債務者を殴り脅すことさえある。プレイヤーの選択次第で残虐非道なキャラクターにもなれる。ただ、彼の本来の性格は穏やかで、粗暴なものではない。毎日のように記している日誌からそれは伺い知ることができる。アーサーを殺したいと思う者。地獄から救ってくれた恩人だと慕う者。そのどちらにもプレイヤーは出会うことだろう。ちなみに僕は、シャーロットというキャラクターとのエピソードがぶっちぎりで好きです。

 

彼はギャング団の存続のために策を講じるものの、事態が一向に好転しないことに焦りと苛立ちを抱えながら義賊としての誇りや求心力を失っていく親代わりのダッチに忠義を誓う一方で、自分自身の心に従うことも放棄しない。「自分には学がないから難しいことは分からない」と自嘲するけど、思考停止や盲信には決して陥らない。とても理性的で思慮深いキャラクターだと僕は感じた。度重なる失敗に疲弊しているのはダッチだけではなくアーサーも同様だ。だが、擦り減っていく敗走の旅路の果てに辿り着いた"人間の本質"はまったく異なるものだった。彼が愛用する帽子、その一筋一筋の傷に生き様と強さもまた刻み込まれているように思えた。Rockstar Gamesは新たな"タフガイ"を生み出したのだろう。

 

不満点は多い。決定ボタンはXボタンで、◯ボタンがキャンセルというのは前時代的な洋ゲーって感じがする。全てがローカライズされているわけではないため、日本語字幕が表示されない雑談も多い。ボタン長押しによってアクションを行うことが多いため、レスポンスを悪く感じる場面も目立つ。そもそも、長押し完了までの時間がところどころ違っていたりもした。キャンプに物品を寄付する時は長押しなのに、アイテム屋に売る時は単押しになっていたりということもある。結果は同じなのになんで違う操作を求められるのか、メニューやUIはどうにも洗練されていない印象を拭えない。指名手配のシステムについては重要かつ複雑なわりに説明不足なので、エンディングを見届けた今の段階でも理解しきれていない要素があると思う。

 

武器と服を揃えたらもう特にお金の使い道がない。世界観的に毛皮を売っている店があっても良かったんじゃないか。なんてことも言い出したら本当にキリがない。だが、唯一無二の熱いストーリーと重厚な人間ドラマを僕に見せてくれたゲームであり、興奮を与えてくれたことも事実だ。改めてだが、評価が難しいゲームだ。「RDR2は万人にオススメできるようなゲームではない」と冒頭で言ってみたものの……

 

レッド・デッド・リデンプション2』をプレイしてもらいたい。

ぜひ、贖罪の物語を見届けてもらいたい。

 

こんなことを言いたい気持ちになってしまう。そんな熱量を持った魅力的なゲームだ。前作のRDRもまたプレイしてみたいと思った。PS4向けにリマスターとかやってくれませんかね、Rockstar Gamesさん!!

 

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レッド・デッド・リデンプション2【CEROレーティング「Z」】 - PS4

レッド・デッド・リデンプション2【CEROレーティング「Z」】 - PS4