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『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』観てきました。あなたはカイロ・レンの物語を見たか ~12月4週記~

2019年ももうすぐで終わってしまう。歳を重ねるごとに月日の流れが早く感じられるのは、変わらない1日の時間に対して、生きてきた時間の累計が増えていくのだから当然なわけだが、「感動することが減っていく」ということにも要因があるらしい。

 

子供の頃は食べるもの、触れるもの一つ一つが新鮮で感動していたけど、大人になるにつれてそういった体験が少なくなるってことらしい。以前、NHKのチコ叱で聞いた話だ。ボーっと生きてんじゃねーよ!ってわけだ。

 

■『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』観てきました

 

 

 

スター・ウォーズの最新作、スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を観ました。ネタバレするんで、観てない人はご注意を。

 

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続三部作の1作目スター・ウォーズ/フォースの覚醒で監督を務めたJ・J・エイブラムスが再びメガホンを取る形に。42年に渡って描かれた大人気シリーズの締め括りを任されるなんて相当な重責であったはずだが、その期待に見事応えてくれたと思う。スターウォーズシリーズが好きで良かった。

 

続三部作はルーカスフィルムがディズニーに買収され、ルーカス本人は製作総指揮から離れるという新体制で製作が進められた。このためか、従来のスターウォーズの世界観から逸脱したシーンも多く見受けられた。監督も「J・J・エイブラムス」→「ライアン・ジョンソン」→「J・J・エイブラムス」というリレー形式になったためか、作風やキャラ設定にブレが出てる部分もある。新規ファンと従来ファンのどちらに寄りたいのか、わりと製作サイドで右往左往してたように感じる。最終的には後者に寄るようにしたんだろうな。ランドやパルパティーンの再登場が如実にそれを物語っている。

 

主人公レイの出自については影響をもろに受けているように思える。新三部作のアナキン、旧三部作のルークのような「選ばれし者である」に対して、続三部作のレイは「選ばれし者ではない」という背景がキャラクター性に深く関わっていたし、ストーリー上でも意識的に取り入れられていた要素のはずだが、結局はパルパティーン、つまりはダース・シディアスの血を引く者になってしまった。最後にはスカイウォーカーにまでなってしまうし。

 

 

 

「レイとカイロ・レンのフォース通信…物理的な転送してるの……何?」

 

「ファイナル・オーダーの戦力、秘境の星でシスの信奉者は無限湧きでもしてるの?」

 

色々ツッコミ所はあるんだけど、それに勝る面白さがあったので、繰り返しますが僕はこの映画が好きです。スターウォーズが好きで良かった。映画館に観に行って楽しかった。

 

風前の灯となったレジスタンスを救う増援。打ちのめされたレイを鼓舞する歴代のジェダイ達。お約束ながら、この展開はやっぱり好き。

 

 

■ベン・ソロになったカイロ・レン。その手には、ジェダイの光刃

 

続三部作を通して一番の輝きを放ったキャラクターはファースト・オーダーの手先である悪役、カイロ・レンだろう。『フォースの覚醒』冒頭でレジスタンスのエースパイロット、ポーが放ったブラスターの光弾を静止させるという今までにない映像描写で圧倒的な存在感を見せつけた彼だが、以降はまぁなんとも頼りない。思い通りにならないとすぐキレて周囲に当たり散らしたり、ライトセーバーやフォースの修行を積んでいないレイに斬り伏せられたりと残念な感じ。「思ってたより強くないじゃん…」と誰もが思ったはずだ。

 

自分の力では偉大なる祖父、ベイダーのようにはなれないと気付いている焦りが伝わってくるようなキャラクターだった(実際、レイに見破られていた)。

 

彼が愛用するクロスガード・ライトセーバーの設定を紐解くと、ひび割れたカイバー・クリスタルを使用しているらしい。それによってエネルギーの収束が乱れた荒々しい赤の光刃になっているのだとか。なんだか、迷いある心を投影しているようではないか。

 

『スカイウォーカーの夜明け』では、彼が自らの意思でその剣を捨て、新たなライトセーバーを手にする過程が描かれる。「銀河系の自由と正義の守護者」であるジェダイの騎士が愛用した青いライトセーバーだ。

 

レイを救うために駆けつけた彼の姿は、愛する者を助けたいと願ってシディアスのもとへ向かった祖父、アナキンの姿と重なる。アナキンはここで決定的な誤ちを犯してダークサイドへ堕ちてしまうが、カイロ・レン改め、ベン・ソロは違う。ライトサイドへ帰還したからこそ、シディアスの前に立つのだ。

 

ダース・ベイダー(アナキン)とカイロ・レン(ベン)はストーリーを通して明確に対比していたように感じる。ジェダイの騎士、シスの暗黒卿として絶大な力を奮ったアナキンのようにはなれないと思われていたベンが、偉大なる祖父でも成し得なかった「愛する者を死から救う」を成し遂げる。

 

続三部作の2作目『最後のジェダイ』でルークが語った「私は最後のジェダイではない」という言葉はレイだけではなく、カイロ・レンの中に宿るベン・ソロのことも信じて向けられたように今では思える。かつて父を信じたあの時と同じように。

 

続三部作はレイが主人公となっているが、カイロ・レンもまた主人公である物語なのだと思う。スカイウォーカーの系譜として、実に良い締め括りを見ることができた。